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2025/11/18

電子制御の急増で“勘”が通用しない時代へ──整備技術の難易度はどこまで上がる?

電子制御の急増で“勘”が通用しない時代へ──整備技術の難易度はどこまで上がる?

こんにちは。
クールペイです。
 
電子自動車が普及するにつれて、整備現場に寄せられる相談の“質”が明らかに変わってきています。
 
✔ エンジンチェックランプ
✔ 電子パーキングの警告
✔ カメラ系のエラー
✔ 加速時だけ出る不調
 
昔のように「音」「振動」「匂い」で判断できるものは減り、外側から見ても原因が読み取れない“電子制御の乱れ”が増えており、ベテラン整備士の経験や勘が通用しづらくなってきました。
 
一方、新人が学ぶべき知識量は増え診断の負荷も重くなっている。
 
そんな整備会社のリアルをテーマに今日はお話ししていきたいと思います

電子制御の急増で整備の“勘”が通用しなくなった理由

昔の整備はアナログな情報から不調の原因を推測する力が非常に大きな武器でした。
音の高さ、振動の種類、匂いの違和感──。
長年の経験が、整備の精度をそのまま上げていた時代です。
 
しかし近年の車両はエンジン・ミッション・ブレーキ・ステアリング・安全支援まであらゆるシステムがECUで管理されるようになりセンサーの数も飛躍的に増えました。
 
つまり、、
**車の内部で起きていることは外から見えない。**
 
たとえばアイドリング不調。
この一見シンプルな症状も、今の車では空燃比補正、スロットル学習値、吸気情報、点火時期、負荷計算、燃圧制御、通信の遅延、電圧の上下など、複数の要因が同時に絡み合っています。
 
昔のように「怪しい部品を先に交換する」という発想では解決できないことが増えているのです。
 
そして、いま求められているのは、、
**“データを読み解き、不調の背景を逆算する力”。**
 
経験と勘の時代からデータとロジックの時代へと変わり始めています。
 
 

複雑化した車両構造が整備現場にもたらす影響

 
電子制御の急増で“勘”が通用しない時代へ──整備技術の難易度はどこまで上がる?
 
車両の構造は年々複雑化し整備士が理解しなければならない情報は増え続けています。
 
直噴エンジンや高圧燃料ポンプ、電子制御ブレーキ、可変バルブタイミング、そしてADASによる安全支援システム──。
 
これらの高度な制御は、性能向上に欠かせない一方で、
“ごく小さなズレ” がそのまま症状として現れる繊細さを持っています。
 
代表例が電子スロットルです。
 
外から見ればスムーズに動いていても、
内部の学習値が少しズレただけで違和感が出てしまいます。
 
さらに現在の車は、
複数のシステムが強く連動して動く仕組みになっています。
 
吸気の誤差 → 燃料補正の乱れ → 変速ショック → アイドリング不安定
 
このような“連鎖的な不調”が起きるため、
一つの症状からすぐに原因を特定できない場面が増えています。
 
複雑化した車両を前に、
整備士は「全体のつながり」を理解しながら
診断を進めなければならない時代になりました。
 
 

診断の難易度が跳ね上がった現場のリアル

最新車両の診断ではまず故障コードを読み取りますがそのコードが示す箇所が直接の原因であるとは限りません。
 
むしろ、“周辺の制御乱れの影響で結果的にコードが上がった” というケースが非常に多い。
 
そのため整備士はライブデータの動きを見ながらどの制御が本当に異常なのかひとつずつ切り分けていく必要があります。
当然、時間がかかります。
 
しかしお客様は 「診断なんてすぐできるでしょ?」 と考えている場合が多く丁寧に時間をかけるほど説明の負担が増えます。
 
焦れば誤診断につながり、再作業やクレームになる。
このような悪循環が現場に大きなストレスとしてのしかかっています。
 
電子制御時代の診断は整備士の“技術力と精神力”の両方が試される作業になっています。
 
 

電子化の影響が現場の運営全体に広がり始めている

電子制御の急増で“勘”が通用しない時代へ──整備技術の難易度はどこまで上がる?
 
電子制御の増加によって影響を受けているのは整備そのものだけではありません。
工場の“運営”にも大きな変化が出ています。
 
診断に時間がかかることで、予定していた作業台数がこなせなくなり、代車の回転率が落ち予約枠がすぐ埋まってしまう。
 
さらに、診断が得意な整備士と不得意な整備士の差が以前より明確になり特定の人に負担が集中するケースも増えています。
 
この“偏り”は現場の空気にも影響します。
 
「自分ばかり難しい車が回ってくる」
「若手に任せたいのに教える時間がない」
「診断に時間をかけると、ほかの作業が全部遅れる」
 
整備士ひとりひとりの小さな疲れが積み重なりひそかに現場を圧迫していきます。
 
電子制御の増加は整備士の技術だけでなく、工場全体の回り方そのものに影響を与えているのです。
 
 

中古車販売店が抱える新たなリスク

 
中古車店にとっても、電子制御の増加は大きな課題です。
外観がきれいでも内部のデータに乱れがあれば納車後に不調が出るリスクがあります。
 
過去にどんな整備がされたのか、初期化が適切に行われているか、どんな学習値が残っているのか──
…これら、外からでは分かりません。
 
そのため、仕入れ段階での診断精度が非常に重要になっています。
しかし、中古車店の多くは整備工場ほど設備が整っておらず、最新車に対応できるスキャン環境が十分でないことも多い。
 
結果として、、、
「納車して数日で警告灯が付いた」
「走り始めてから症状が出た」
といったクレームが増えるリスクがあります。
 
電子制御車両が増えるほど、
**仕入れの質がそのまま販売後のリスクに直結する**
時代になりました。
 
 

設備投資・人材育成・診断時間──3つの課題をどう乗り越えるか

 
整備会社・中古車店が抱える課題は主に三つあります。
 
**設備投資**
**人材育成**
**診断時間の確保**
 
この三つは互いに影響しあっています。
 
診断機だけ増やしても使いこなす人材がいなければ意味がない。
育成に力を入れても作業が回らなければ現場は疲弊する。
 
作業効率を上げても仕入れや診断の制度が低ければ経営のリスクは増える。
 
だからこそ、経営者は冷静に「何を優先的に強化すべきか」を判断する必要があります。
 
電子化の時代は、整備の技術力だけでなく、
**工場の“経営戦略”そのものが問われる時代** です。
 
 

電子化が生む“見えないミス”とクレーム増加の実情

 
電子制御の急増で“勘”が通用しない時代へ──整備技術の難易度はどこまで上がる?
 
電子制御システムが増えたことで整備後の“見えないミス”も増えています。
 
バッテリー交換後の登録忘れ。
電子パーキングの初期化漏れ。
ステアリング角度センサーの補正不足──。
 
外側からでは分からず、納車後しばらくして症状が現れるケースも多いためクレームにつながりやすい。
整備士にとっても、こうした「見えない作業の重要度」が増えたことは大きな負担になっています。
 
 

ベテランも若手も苦しむ“教育の限界”とは

 
電子制御の知識は膨大で短期間では習得できません。
しかし現場は忙しく教育に割ける時間が限られています。
 
若手は「とりあえずやりながら覚える」状態になり、ベテランは昔の知識では対応できない場面が増え、
双方に負担がのしかかっています。
 
この“教育の限界”こそが電子化時代の整備現場で最も深刻な問題のひとつです。
 
 

電子化の時代に整備工場・中古車店が生き残る戦略

 
電子制御時代を生き抜く鍵はなにか?
**診断力を“強み”に変えること** です。
 
最新車両の診断に対応できる工場は、それだけで地域から選ばれやすくなります。
 
また、設備投資もむやみに拡大するのではなく自社のメインの車種・メーカーに絞って優先順位をつけて導入することが重要です。
 
さらに、スタッフ間で情報を共有し、短い時間でも勉強できる仕組みがあれば診断力は確実に底上げできます。
 
電子化は脅威ではなくうまく向き合えば“差別化の武器”になります。
 
これからの整備会社・中古車店には、技術だけでなく学び続ける姿勢と戦略的な判断が求められていくでしょう。
 
クールペイは、
これからも現場の挑戦を支え続けていきます。
 
 

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