2025/11/22
いま一番壊れているのはどこ?故障原因の割合で見る“現場のリアル”

クールペイです。
最近、工場に届く修理依頼の“偏り”が以前よりはっきりしてきました。
「またここ?」「今日も同じ症状だな…」と、整備士の多くが思わずため息をつくあの感覚。
実際にどの部位が故障しやすくなっているのか、現場のデータと整備士の声をもとに“リアルな傾向”をまとめました。
故障の傾向は時代とともに“偏り”始めている
昔なら「走行距離が延びたらベルト」「年式が古いならラジエーター」など、おおよその故障時期が読めました。
今は違います。車の構造が複雑になり、電装品も増え、素材も変化しているため、壊れるタイミングも原因も大きくバラけています。
ただし、現場では
“特定の部位の不具合が異常に増えている”
という肌感があります。
その傾向を、まずはデータで見てみましょう。
【グラフ①】主要故障部位の割合(直近3年)

この棒グラフは、過去3年間に入庫した一般修理から「明確な部位トラブル」を分類し集計したものです。
最も多いのは 電装系(ECU・センサー類)。
続いて 足回り(ブッシュ・ショック・アーム系)、
そして 冷却系(ウォーターポンプ・サーモスタット・ラジエーター関連)が続きます。
とくに電装系の割合は急激に伸びています。
整備士のリアルな声
・「いや、またABSセンサー…。今月だけで何本替えたんだろう」・「信号系のエラーは症状が出たり消えたりで、結局手間が倍なんですよ」
・「最近は“部品交換で終わる修理”じゃなくて“原因探しに時間がかかる修理”が多いですね」
ユーザーから見ると「メーターのライトが一瞬点いただけ」に見える故障でも、実際は診断機と格闘して何時間も費やすケースも珍しくありません。
具体的には次のような変化が起きています
・センサー類の誤作動
・ハーネスの接触不良
・ECU関連の通信エラー
・アクチュエーター応答不良
整備士なら思い当たる症状が多いのではないでしょうか。
電装系トラブルが増えている“3つの理由”
①電子制御化が一気に進んだ
例えば、走行中に一瞬だけ失火したように感じても、パワーは落ちず普通に走れてしまうケースがあります。
しかしECUの履歴を確認すると、過去に15回以上ノックセンサーの異常が記録されていた、というような事例も。
ユーザーは“問題なさそう”と思っていても、裏側ではセンサーが限界ギリギリで踏ん張っているケースが増えています。
10年前と比べて、電子制御が使われる範囲は圧倒的に増えています。
エンジン制御だけでなく、ブレーキ、ステアリング、サスペンション、エアコン、安全装備…。
もはや車のほとんどが電子制御で動いています。
部品点数が増えれば故障リスクも増え、そのぶん原因特定も難しくなるため、整備士の負担は確実に増えています。
②熱による劣化が“電子部品にも”来る時代
昔は熱といえばゴムや樹脂の劣化が中心でした。
しかし今は、熱影響でセンサー内部や基盤が弱るケースが増加。
エンジンルームの温度が高くなったことや、コンパクト化による部品の密集も影響しています。
ある工場では、高温環境でECU内部の半田が微細に割れていたケースがありました。
症状は「エンジンがたまにかからない」。
診断機では“異常なし”。
最終的にはECUを開けてようやく原因が判明し、整備士3人がかりで丸1日かかったという例もあります。
ユーザーが感じる“たまに起きる不具合”ほど厄介なのは、こういう背景があるためです。
③ユーザーが気づけない“不快感のない故障”
昔の車は壊れた時に分かりやすい症状が出ました。
回転が安定しない、異音がする、振動が増えるなど、違和感で気づけたからです。
今は違います。
電子制御が誤作動していても見た目では分からないまま、
ECUにエラーだけが記録され、唐突に警告灯だけが光る。
整備士側は故障診断機と睨み合う時間が増えています。
【グラフ②】電装系トラブルの推移(折れ線)

折れ線を見ると、電装系は特にセンサー関連の故障が右肩上がりになっています。
ABS・VSC関連、O2センサー、スロットル系、温度センサーなどが定番化しつつあり、年式に関わらず発生するのも特徴です。
「壊れにくいはずの新しい車でもセンサー不良が起きる」
これは整備士の現場感と一致するデータです。
よくある会話
ユーザー:「昨日まで普通に走れてたんだけど?」整備士:「実は数ヶ月前からデータ上は怪しい動きをしてました」
センサー類は“予兆が表に出ない”ため、ユーザーと現場の認識にギャップが出やすいのが実情です。
足回りが壊れやすくなった理由
電装系の次に多いのが足回りのトラブルです。
例えばロアアームブッシュ。
最近は5〜7年で亀裂が入る車種が増加しています。
ユーザーは「段差でコトコト音がする?」程度の感覚ですが、実際には足回りの“基礎体力”が落ちており、ハンドリングや制動性能にも影響しています。
特にSUV系やハイブリッドは重量があるため、負担も増えやすい傾向です。
特に増えているのが以下です。
・ロアアームブッシュの亀裂
・ショックアブソーバーの抜け
・ハブベアリングの異音
・ドライブシャフトブーツ破れ
ここ数年で道路環境は大きく変わりました。
段差は減りましたが、交通量増加・加速減速の多い街乗り・低扁平タイヤの普及など、車の負担は確実に増えています。
また、素材の軽量化も耐久性に影響しています。
“壊れても車が動いてしまう”ため気付きにくいのも特徴です。
冷却系トラブルは年式を問わず増え続けている
樹脂タンクのラジエーター割れは年式を問いません。
最近では5万kmで上部タンクに細かいクラックが入り高速道路で一気に冷却水が吹き出したという事例もあります。
樹脂の耐熱性能が昔より落ちていることが背景にあります。
電装系とは別に、冷却系は「古い車だけのトラブル」ではなくなっています。
樹脂タンクのラジエーター、樹脂製ハウジング、樹脂ギアのウォーターポンプ…。
樹脂パーツの耐久性低下が顕著で、10年前より早い段階で不具合が出ています。
さらに、冷却系は“故障の連鎖”が起きやすいのが厄介。
オーバーヒート防止のためのセンサーも多く、電装と冷却が同時に壊れるケースも増えています。
故障部位トップ5(工場の現場集計より)

ハイブリッド車では、インバーター冷却系の劣化や電動ウォーターポンプの不調も増えています。
ターボ車では、EGRの詰まりやアクチュエーター不良が多く、
“燃費を良くする仕組み”が同時に“故障ポイント”にもなっています。
1位:電装系(ECU・センサー)
最も増えている分野。診断機でも断定しきれないケースがあり、整備士の技術差が結果に出やすい。
2位:足回り(ブッシュ・ショックなど)
素材の変化と運転環境が大きく影響。年式が新しくても油断できない。
3位:冷却系(ポンプ・ラジエーター)
樹脂化の影響が大きく、突然の水漏れが増えている。4位:エアコン(コンプレッサー・エバポレーター)
ガス漏れの増加、電動化による負担増など、整備の難易度も上昇。5位:吸気系・EGR・ターボ
煤汚れの蓄積、センサー誤作動、アクチュエーター不良が複合して発生する例が多い。“壊れているのに気づけない”車が増えている理由
【診断が難しかった例】
・アイドリングが不安定 → 点火かと疑う → 実際はスロットルの微細な学習ズレ
・たまにパワーが落ちる → 燃料系かと思えば → 吸気温センサーの断続不良
こうした「決めつけが通用しない」故障が増えているのが現場の負担になっています。
ユーザーから「急に壊れた」「全く前触れがなかった」と言われることが増えました。
実際には、以下の理由で“前兆が表に出にくく”なっているからです。
・電子制御が異常を吸収してしまう
・異音や振動が車室内で感じにくい
・走行性能が落ちても補正される
・温度や負荷の異常をECUがカバーしてしまう
結果として、故障は“唐突に見える”形で発生します。
このギャップが整備士の負担をさらに増やしているのが現場の実感です。
故障が増えている背景には“車の変化”がある
今の車は性能も快適性も大きく向上しました。
【予防整備のポイント(ユーザー向け)】
・警告灯が一瞬でも付いたらすぐ点検
・5年〜7年で足回りは一度チェック
・冷却系の樹脂部品は早めの交換
・アイドリングの“たまの微振動”は早めに相談
故障が“突然に見えるだけ”で、本当はゆっくり進行しているケースが多いためです。
同時に以下のような変化が起きています。
・部品の軽量化
・電子制御の増加
・高温化(触媒・ターボの大型化)
・燃費規制による素材変更
・下回りの防錆仕様縮小
・センサーに依存した制御
これらが複合し、壊れやすい部位がはっきりし始めています。
整備士がこれから向き合う“新しい故障の時代”
昔は「音」「振動」「目視」「経験」で判断できたものが、今は 「診断機」「センサー値」「通信」「論理思考」 も合わせて見なければ原因特定ができません。
つまり、整備士に求められるスキルは確実に増えています。
・電子制御の理解
・センサーの特性
・通信トラブルの切り分け
・基盤や内部の劣化の見極め
・実測値の比較
・車種ごとの学習データ癖
こうした複合的な判断が必要になっており、「昔の経験だけ」では太刀打ちできない領域に入りました。
まとめ:いま一番壊れやすいのは“電装系”だが、その裏には構造変化がある
今回のデータから明確に分かるのは、
壊れる部位が時代とともにシフトしているという事実です。
電装系・足回り・冷却系という“三大トラブル”が突出し始め、整備士が向き合う負担と難しさも確実に増えています。
壊れやすいポイントの傾向を把握することで、予防整備の提案やユーザー説明の説得力が大きく変わります。
そして整備士自身も、新しいトラブルの時代に対応できるよう、知識や経験をアップデートし続ける必要があります。
現場が感じているのは、“昔より車の寿命が短くなった”のではなく“壊れる場所が変わった”ということです。
新しい車は静かで快適。
しかし裏では、電子制御・樹脂部品・軽量化の影響で、“目に見えない弱点” が増えています。
だからこそ、整備士の技術と知識の価値はむしろ上がっています。
クールペイは、
これからも現場の挑戦を支え続けていきます。
整備工場・車&バイク販売店を応援するファクタリングサービス
↓ ↓ ↓ ↓ ↓



