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2026/01/07

整備工場で一番フル稼働しているのは、工具でも車でもなく口だった

整備工場で一番フル稼働しているのは、工具でも車でもなく口だった

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こんにちは。
クールペイです。
  
工場の一日はエンジン音で始まる。そう思われがちですが。実際は違います。
いちばん最初に動き出すのは口です。
予約の電話。受付の問診。症状の言語化。整備内容のすり合わせ。見積の根拠。追加作業の相談。納車時の説明。
そして再来店での答え合わせ。
工具を握るより先に話し始め。車を触ったあとも話し続ける。
最近の整備は。そんな仕事になりました。
 
昔はどうだったか。
もちろん昔も説明はありました。
ただ。作業の中心は車のほうにあり。会話は補助でした。
ところが今は。会話が仕事の背骨になりつつあります。
理由は単純に見えて複雑です。
車が賢くなり。できることが増え。故障の形が変わり。説明しないと伝わらない項目が増えました。
しかも。説明が増えたのに。作業時間は増やしにくい。
ここに現場の息苦しさがあります。
 
今回は。グラフを二枚使いながら。
なぜ口がフル稼働するのか。
その背景と。現場がラクになるヒントを整理します。
 
 

口が忙しくなるのは「お客さん側の不安」が増えたから

整備工場の会話量が増えた一番の要因は。整備士が饒舌になったからではありません。
お客さんが不安を抱えやすくなったからです。
不安が増えると。質問が増えます。
質問が増えると。説明が増えます。
説明が増えると。確認が増えます。
結果として。口が回り続けます。
 
ここで参考になるのが。BMW Group UKの調査です。
二千人のドライバー調査で。車のメンテや点検の予定や不具合を考えることに。
一年あたり丸一日相当の時間を使っていると報告しています。
さらに。運転にまつわる事務的なことが頭の中のスペースを取っていると感じる人が四十六パーセント。
もしその心配から解放されれば。もっと運転を楽しめると答えた人が六十八パーセント。
つまり。車は移動の道具なのに。頭の片隅をずっと占有している人がかなりいるわけです。
 
この不安は。整備工場に来た瞬間に噴き出します。
点検の時期を逃していないか。
今の症状は危険なのか。
いくらかかるのか。
どこまで直せばいいのか。
この車をあと何年乗れるのか。
本当はこれが聞きたいのに。うまく言えない人も多い。
だから問診は長くなります。
 
 

【グラフ①】ドライバーが抱える「車のモヤモヤ」実データ

 
整備工場で一番フル稼働しているのは、工具でも車でもなく口だった
 
グラフ①は。さきほどのBMW Group UKの調査結果を。整備工場目線で読み替えたものです。
ポイントは二つあります。
一つ目は。不安が数字で見えること。
二つ目は。不安がある人ほど。説明を求めること。
 
ここから分かるのは。
口が回る現場は。整備工場だけの問題ではないということです。
お客さんの側で。すでに頭が疲れている。
そこへ整備の専門用語をぶつければ。さらに疲れます。
疲れると。確認が増えます。
確認が増えると。現場も詰まります。
 
だから本当は。整備士の口は。
説教のためではなく。翻訳のために動いています。
お客さんの不安語を。整備の作業語に翻訳する。
整備の結果語を。お客さんの安心語に翻訳する。
この二往復が増えたことが。口のフル稼働の正体です。
 
 

次に増えたのは「車側の説明ポイント」

お客さんの不安が増えただけなら。
経験で捌ける部分もあります。
しかし。もう一つ大きい変化がありました。
車そのものが複雑になったことです。
 
たとえば。安全装置。
ドライブレコーダー。
後退時の自動ブレーキ。
運転支援。
このあたりは。今や珍しくありません。
J.D. PowerのJapan Tech Experience Index Studyでは。
2023年車両で搭載頻度が高い技術として。
ドライブレコーダーが70パーセント。
後退時の自動緊急ブレーキが41パーセント。
運転支援系が36パーセントと示されています。
つまり。三台に一台以上が運転支援を持っている。
10台中7台がドラレコを持っている。
こういう世界です。
 
装置が増えると。整備は二つの意味で難しくなります。
一つは故障の形が変わること。
部品単体が壊れるより。情報の食い違いが原因になる。
もう一つは説明ポイントが増えること。
お客さんの質問が。直す話から。使う話へ広がります。
警告灯が点いたらどうする。
作動条件は何か。
誤作動に見える時はどう切り分ける。
学習が必要か。
更新が必要か。
こういう会話が増えます。
 
 

【グラフ②】搭載技術が増えるほど「説明が必要」になる実データ

 
整備工場で一番フル稼働しているのは、工具でも車でもなく口だった
 
グラフ②は。J.D. Powerの調査で示された搭載頻度の高い技術を。整備現場の説明負担に置き換えて可視化したものです。
 
ここで重要なのは。故障が多いからではありません。
装置があるだけで。説明の必要が生まれることです。
例えばドラレコ。
配線の取り回し。電源の取り方。保存の仕組み。誤消去の注意。
これだけで。口の仕事が増えます。
後退時の自動ブレーキ。
センサーの汚れ。バンパーの損傷。学習の話。作動条件。
運転支援。
前方カメラ。レーダー。輪速。ステア角。関連のDTC。
さらに校正の必要性。
これらは作業だけで終わらず。説明で終わります。
 
つまり。
車の機能が増えるほど。整備の仕事は口を必要とする。
この構造が。現場の体感としての疲れを作っています。
 
 

口がフル稼働すると何が起きるか

 
会話が増えること自体は悪ではありません。
問題は。会話が割り込みになることです。
整備は集中の仕事です。
診断も整備も。頭の中で仮説を立てて検証します。
そこへ電話が鳴る。
フロントから呼ばれる。
追加説明が入る。
そうすると仮説が途切れる。
途切れた仮説は。戻すのに時間がかかる。
これが。手を動かしていないのに疲れる正体です。
 
さらに厄介なのは。説明の一貫性です。
今日はこう言った。
次の来店では別の説明を求められる。
過去の説明と矛盾すると信頼に影響します。
だから整備士は。車だけでなく言葉も整備し続ける。
この負荷は。数字に出にくいのに。現場を確実に消耗させます。
 
 

口の仕事を減らすのではなく「整える」

ここでよくある誤解があります。
説明が増えたなら。説明を短くすればいい。
確かに短くできる部分はあります。
ただ。短くするだけだと。
お客さんの不安が残り。
後で電話が増え。
再来店で説明が長くなり。
結局口の仕事は増えます。
 
必要なのは。口の仕事を減らすのではなく整えることです。
具体的には三つです。
 
一つ目。問診の型を作る。
症状を聞くのではなく。状況を聞く。
いつ。どこで。どの操作で。どんな音か。
この型があるだけで。無駄な往復が減ります。
 
二つ目。説明のゴールを決める。
直りました。で終わらせない。
再発しないために。お客さんが次に何をすればいいか。
これを一行で言えると。安心が残ります。
 
三つ目。言葉を記録して共有する。
作業記録は残るのに。説明記録は残りにくい。
過去に何を伝えたかが残れば。
再来店で話が戻っても。整合性が取りやすい。
結果として。口の負担が減ります。
 
国土交通省の資料でも。業務の見える化や事務処理の効率化が生産性向上に寄与する事例が紹介されています。
ここで言う事務処理は。紙を減らす話だけではありません。
情報の持ち方を変える話です。
説明の情報を整えることも。
現場の生産性の一部です。
 
 

口がフル稼働しても楽になる現場の共通点

最後に。現場で差が出るポイントを整理します。
口が回るのは避けられない。
ただ。疲れ方は変えられる。
 
疲れる現場は。
説明がその場の思いつきになっています。
担当者によって言い方が違う。
お客さんによって順番が変わる。
だから毎回ゼロから組み立てる。
 
楽になる現場は。
説明が工程の一部になっています。
最初に聞くこと。
途中で伝えること。
最後に渡すこと。
この順番が固定されている。
だから話しているのに迷わない。
 
口のフル稼働を止めるのではなく。
口の動きを整備する。
これが。今の整備工場に必要な発想です。
 
 

口が忙しくなった決定打は「電子的な車検」が始まったこと

ここ数年で。現場の会話が一段増えたと感じる人は多いはずです。
その引き金の一つがOBD検査です。
国土交通省は。令和6年10月1日から車検の検査項目に電子装置の検査であるOBD検査が追加されると案内しています。
対象は国産車で令和3年10月1日以降の新型車。輸入車で令和4年10月1日以降の新型車です。
要するに。新しい車ほど。車検の場で電子装置の状態が見える化される。
見える化されると何が起きるか。
質問が増えます。
 
例えば車検の説明。
従来は。光軸。制動。排ガス。下回り。漏れ。摩耗。
ここまでは目に見える部位が中心でした。
今はそこに。電子装置の合否という項目が乗ります。
しかもOBD検査は。検査用スキャンツールを接続して。故障コードを読み取る。という説明が必要です。
お客さんはそこで初めて。ドラレコや後付け機器が差し込み口に付いていると。外す必要がある。という注意を知ることもあります。
この瞬間。整備工場の口はフル稼働します。
 
そして重要なのは。ここから先です。
OBD検査は。単に車検項目が増えた話ではありません。
整備の説明が。機械の話から。情報の話へ広がったことを意味します。
 
 

会話の中身が変わった 部品の説明から「状態の説明」へ

昔の説明は。部品の交換が中心でした。
ベルトが劣化している。パッドが減っている。オイルが汚れている。
これは写真でも現物でも示せました。
ところが今は。状態を説明する場面が増えます。
例えば。
警告灯は消えたが。履歴は残っている。
症状は再現しないが。記録は残っている。
現象はあるが。故障コードは出ない。
逆に。故障コードはあるが。体感はない。
 
こういうケースほど。
口の負担が跳ね上がります。
なぜなら。説明の目的が二重になるからです。
一つは現状の安全性。
もう一つは今後の方針。
ここを丁寧に言葉にしないと。
お客さんの不安が増える。
不安が増えると。
また電話が鳴る。
また来店が入る。
そして説明が一段長くなる。
 
 

現場で本当に効くのは「説明の型」

ここで。現場で使える型を一つ置いておきます。
長い説明ではなく。短い一言を揃えるための型です。
 
一行目は結論。
二行目は根拠。
三行目は次の一手。
 
例。
結論。いまは走行に支障はありません。
根拠。検査で危険な故障コードは確認されていません。
次の一手。次回点検で同じ記録が出るかを見て方針を決めます。
 
この型は。口のフル稼働を止めません。
でも。口の消耗を止めます。
理由は。説明が毎回ゼロからの作文にならないからです。
 
 

グラフを記事に落とし込むコツ 数字は「現場の翻訳材料」

今回のグラフは二枚とも。いわゆる整備士の稼働率の資料ではありません。
それでも意味があります。
なぜなら。現場の会話は。相手の心理と車の仕様の間で起きるからです。
 
グラフ①は心理。
ドライバーの頭の中に。車の予定や不安が居座っていることを示します。
グラフ②は仕様。
搭載される技術が増え。説明ポイントが増えることを示します。
この二つが重なると。
整備工場で口がフル稼働する。
これがこの記事の骨格です。
 
 

それでも口が必要な理由 説明は整備の一部になった

ここまで読むと。
説明が増えるのは仕方ない。
そう感じるはずです。
実際その通りです。
説明はもう。おまけではありません。
 
国土交通省も。先進安全技術は事故防止に効果が期待される一方で。正しく作動するためには定期的な検査が必要だと述べています。
つまり。
安全機能が増えた世界では。
整備は作業だけで完結しない。
検査と説明が含まれて初めて安全が保たれる。
 
だから現場は。
口を減らす戦いではなく。
口を整える戦いに変わりました。
 
 

今日からできる小さな改善 口のフル稼働を味方にする

最後に。小さな改善を四つだけ。
 
一つ。受付でキーワードを拾う。
危ない。すぐ直したい。いくらまで。いつまで乗る。
この四つが出たら。説明の重点が決まります。
 
二つ。見積の線引きを言語化する。
どこまでを必須にするか。
どこからが提案か。
この線を言葉にすると。後で揉めにくい。
 
三つ。口の仕事を分担する。
フロントが全部背負う。
メカが全部背負う。
どちらも辛い。
工程のどこで誰が説明するかを決めるだけで。疲れが分散します。
 
四つ。説明の最後に一行の約束を置く。
不安があれば早めに連絡ください。
次は二週間後に状態確認しましょう。
この一行があると。お客さんの不安が静かになります。
 
口がフル稼働する時代は続きます。
でも。口の動きは設計できます。
設計できれば。現場は少しラクになります。
 
 

小さな成功例 口が止まったのではなく「迷いが止まった」

ある工場の話です。
以前は。追加作業が出るたびに電話が増え。
電話が増えるほど。作業が止まり。
作業が止まるほど。納期が詰まり。
納期が詰まるほど。説明が荒くなり。
説明が荒いほど。クレームが増える。
典型的な悪循環でした。
 
そこでやったのは。大改革ではありません。
説明の迷いを減らす工夫だけです。
 
入庫時に。
お客さんが求めているゴールを三択で確認する。
安全重視。費用重視。期間重視。
これを最初に決める。
すると見積の線引きが揃う。
電話の回数が減る。
結果として。口は回っているのに。頭が疲れにくくなる。
 
次に。
説明を短文化して。作業記録と同じ場所に残す。
どの部品を替えたかではなく。
お客さんに何を約束したかを残す。
例えば。
次回は同じ警告灯が出たら連絡。
雨の日に再現したら録画を持参。
この一行が残るだけで。
再来店時の説明が短くなり。
担当が変わっても話がブレにくい。
 
国土交通省の生産性向上の調査でも。
書類の外出や貼付作業の削減。
記入ミスの減少。
事務処理の効率化で負担が軽くなる事例が示されています。
これは紙かデジタルかの話に見えますが。
本質は同じです。
無駄な往復を減らすと。現場の呼吸が戻る。
口の仕事も。往復が減ると軽くなる。
 
 

チェックリスト 口がフル稼働する日に崩れやすいポイント

 
最後に。現場で崩れやすいポイントを。短く並べます。
当てはまる数が多いほど。
口が回っても消耗しやすい状態です。
 
一つ。症状が曖昧で。言葉が揃っていない。
二つ。過去の説明が残っておらず。毎回最初からになる。
三つ。提案と必須の境界が曖昧で。説明が長くなる。
四つ。割り込みが多く。仮説が途切れ続ける。
五つ。納車時の説明が人によって違う。
 
もし三つ以上当てはまるなら。
まずは一つだけ直す。
おすすめは二つ目です。
過去の説明が残ると。
口の仕事が急にラクになります。
 
整備工場で一番フル稼働しているのは、工具でも車でもなく口だった
 
 

まとめ

 
整備工場で一番フル稼働しているのは口。
この現実は。ドライバー側の不安と。車側の技術増加が重なって生まれています。
そしてOBD検査の開始は。
その流れを決定的にしました。
 
口の仕事は減らしにくい。
だからこそ。
問診の型。
説明のゴール。
言葉の記録。
この三つで。口の動きを整える。
それだけで。現場は変わります。
 
明日も口は回ります。
でも。迷いまで回さなくていい。
そう言える工場が。これから強くなるはずです。

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