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2025/08/23

ファクタリング事件簿 第二話:「ブラックでも借りられる」⋯甘い言葉で誘うSNSの罠(後編)

ファクタリング事件簿第二話・甘い言葉で誘うSNSの罠 後編

こんにちは。
クールペイです!
 
今日はファクタリング事件簿 「ブラックでも借りられる⋯甘い言葉で誘うSNSの罠(後編」)をお届けします。
 
前編では、伊藤さんが語る熱い仕事への情熱に押されファクタリング契約してしまった。
 
しかしこれが大失敗だったことが明らかになる⋯
 
   
 

伊藤さんからの入金日

 
今日は伊藤さんからの入金日。
金額は手数料を含めて20万円
 
私は全く疑っていなかった。
前回の電話で仕事にかける情熱は確かだと確信していたし、取引先は誰もが知る大手コーヒーチェーン店を運営する会社だったから。
 
だから、余裕のある気持ちだった。
ランチはピザを頬張った。
宅配ピザは高いが、宅配ピザの店内で食べると50%OFFととっても安くてオトクなのだ!(どうでも良い豆知識)
 
そして会社に戻る。
遅めのお昼だったので14時だった。
 
今日15時が入金期限のお客様が20人以上もいる日だったので、入金状況をチェック。結果、ある一人を除いて入金済み。
 
そして、入金がまだだったのは伊藤さんだけだった。
 
(あれ?)
 
この時点でちょっと不安な気持ちになった。
新規のお客様の場合、割と早い時間に入金を済まされることが多いが、15時まであと一時間もないのにまだ入金されていないというのは黄信号。
 
(いや、遅れているわけではないし⋯)
 
そう思いつつも、不安な気持ちを抑えられずに伊藤さんに電話。
 
(ぷるるるる⋯)
「お客様の電話は都合によりお繋ぎすることができません」
 
⋯ん!?
 
これはやばい雰囲気。
「お客様のご都合により〜」は、携帯回線自体が解約されているわけではないものの、代金未納などで繋がらなくなっている証左だ。
 
ダメ元でもう一回掛けたが駄目だった。
 
⋯まさか、、、
 
 

15時を過ぎても結局入金されず。

 
結局、伊藤さんは15時を過ぎても入金してこなかった。
それまでにメールも何通も送ったが返信なし。
 
(これは、、やばい)
 
慌てて、売掛先である「株式会社〇〇コーヒー」に電話。
事務員の方が電話に出た。
 
私「もしもし、私、株式会社エムライズと申します。御社のお取引先である伊藤様とのファクタリング契約の件でお電話差し上げました」
 
事務員「お世話になります。えっと、ファクタリング契約⋯ですか?」
 
こういう時の説明はなんとも大変だ。
なんていっても、2社間でのファクタリング契約なので、売掛先にとっては、まさに寝耳に水といった感じなので、「ファクタリングとは?」から説明していかないといけない。
 
私「はい。伊藤〇〇様と〇月〇日にファクタリング契約をさせて頂き、御社宛の債権を買い取らせて頂いたのです。(その後、ファクタリング契約について5分ほど説明)」
 
事務員「なるほど⋯内容は分かりましたが、、大変恐縮ですが、私が知る限り、当社が伊藤〇〇様という方から請求書を頂いていることが確認できません。」
 
私「えっ!?」
 
耳を疑う私。
「取引がない=買い取った請求書が架空のもの」であった可能性が高い。
⋯それは、完全に詐欺行為であり重大な犯罪だ。
 
私「ただ、ファクタリング契約の際には御社あての請求書をお預かりしていますし、御社の担当者であるシステム部の遠藤様のお名刺もお預かりしております。」
 
事務員「大変恐れ入りますが⋯システム部という部署はありませんし、それに該当するであろう部署にも遠藤という者は在籍しておりません」
 
さすがに、事務員さんも怪訝な感じの声。
それはそうだ。
突然電話してきた私が、債権を買い取っていると言ったり、存在しない従業員の名前を出したりしては、「いったいコイツは何者だ?」と思うほうが自然だ。
 
そして、この時点で私は完全に悟った。
「伊藤さんは架空の請求書でファクタリング契約をした」
 
私は突然の電話で驚かしてしまったことに対してお詫びを申し入れるとともに、後日、債権譲渡通知書という書面をお送りすること。
 
そして、当社が預かったファクタリング契約に関するエビデンスも提出するから、今一度確認をして欲しいと伝えて電話を切った。
 
その後すぐに債権管理部の担当者に事情を伝え、「株式会社〇〇コーヒー」へ債権譲渡通知書を発送してもらえるように依頼をした。
 
 

その後も伊藤さんとは連絡が取れなかった。

 
次に私は緊急連絡先としてお預かりしていたお母様に電話をした。
何度かのコールのあと、すぐに電話に出てくださった。
 
私「もしもし、私、株式会社エムライズと申します」
 
伊藤母「はい⋯」
 
私「お子様、伊藤〇〇様とのファクタリング契約の件なのですが⋯」
 
※契約内容やお金を払ってもらえておらず連絡がつかない旨を説明。
 
伊藤母「内容は分かりましたがうちの子ではないのではないかと思います」
 
(子どもを庇っているのだろうか?)
 
私「お子様をかばいたくなる気持ちは良く分かりますが、このままでは詐欺などの犯罪となってしまって前科がついてしまう場合もあります。取り返しがつかなくなる前に今後どうするかを話し合うことはできませんか?」
 
私は本心からそう思っていた⋯。
伊藤さんがお金に困って架空の請求書をでっちあげってファクタリング契約をしたとしても、本人にも罪悪感があってなんとかしたいと思っていると思ったからだ。
 
それくらいに、電話で話した印象では仕事に真っ直ぐな姿勢でいるという印象があった。
 
だから、なんとか、事件化をするような深刻な事態にはしたくなかった。
⋯しかし
 
伊藤母「⋯もう!!!!!知らないって言ってるじゃない!!!!」
 
突然切れだした伊藤母。
その後、怒鳴り散らした末に電話を切られ、その後、つながることはなかった。
 
 

正式に事件化することが決まった。

 
結局、その後、伊藤さんと連絡を取ることはできず、売掛先からも架空の債権であったという回答が会社に届き、完全な詐欺事件として対応することとなった。
 
刑事告訴の手続きは、顧問弁護士の先生が迅速に対応してくださり、数ヶ月後には伊藤さんのご自宅に裁判所からの通知が届けられた。
 
とうとう、伊藤さんのファクタリング契約は詐欺事件として正式に判決をくだされることとなってしまった。
 
私はなんともいえない気持ちだった。
せめて、すぐには支払えないとしても、伊藤さんと話し合って、なんらかの解決策を見つけたかったが、こうなってしまってはもはや私にできることはあまりにも少ない⋯
 
 

詐欺を認めた伊藤さん

 
それは突然だった。
伊藤さん本人から当社に電話があったのだ。
 
伊藤さん「もしもし⋯」
 
なんともバツが悪そうだった⋯。
それはそうだ。
きっと、裁判所からの訴状が届いて慌てて電話を掛けてきたのだろう。
 
私「お世話になります。伊藤さん。どうされましたか?」
 
私は敢えて冷静な声で話しかけた。
 
伊藤さん「この度は申し訳ありません。」
 
私「いえ、私も驚きましたが、まずはこうして話せる時間をもらえて良かったです。」
 
その後、罪を認めた伊藤さんと色々な話をした。
伊藤さんは詐欺を認めていた。
 
伊藤さん「会って話せませんか?伝えたいことがあります。」
 
伊藤さんの声からは深刻さを感じた。
なにかを伝えたい。
それは懺悔なのか嘆願なのかわからなかったが、できることはしてあげたかったので私は快諾した。
 
 

SNSで騙されてしまった伊藤さん

 
会社の近くのコーヒーショップで伊藤さんと会った。
電話では沢山話したが、こうして合うのは初めてだったので少し緊張する。
 
私「よく来てくれましたね。正直、来づらかったんじゃないですか?」
 
伊藤さん「はい。でも伝えたいことがあって⋯」
 
私「はい。私もできることはしたいと思ってますからなんでも言って下さい。」
 
本心だった。
でも、伊藤さんが話したい内容というのはあまりにも驚きの内容だった。
 
伊藤さん「これを見て下さい」
 
伊藤さんが私に見せたのはスマホの画面だった。
そこには、XのDMが表示されていた。
 
私はスマホに触らせてもらうことに許可を頂きスクロールして振り返る。
 
⋯驚きだった。
 
そこにあったのは、「資金調達王」と名乗るアカウントとのDMだったのだが、虚偽の売掛金をもとにファクタリング契約をすることを指南する内容があった。
 
しかも、ファクタリング会社の内部を知っているのではないかと思うくらいに、緻密な内容だった。
 
偽の請求書の作り方。
金融機関の入出金履歴の改竄方法。
そして、売掛先から発行される発注書の作り方。
更には、ファクタリング会社とのやり取りマニュアルのようなものまでついていた。
 
完全に、詐欺によってお金を騙し取るための手法がそこにはあった。
 
私「これ⋯」
 
私が言い掛けた時、伊藤さんが話し始めた。
 
伊藤さん
「はい。今回の件は、この人に言われるままやってしまったことなんです。
半年前までシステムエンジニアとして働いていたのですが、会社が倒産してしまい、無職になった私は生活費に困るほど逼迫していてどうにもならなくなった時、この人がお金を調達する良い方法があると勧めてきたもので⋯」
 
私「でも、こんな方法は犯罪になるって思わなかったんですか?」
 
伊藤さん
「もちろん分かってました⋯
でも、とにかく目先のお金が必要でしたし、この人(資金調達王)がいうには、多くのファクタリング会社は20万円程度なら諦めるから大事にならない⋯そういってました。」
 
たしかにそうだ。
金額が小さいと、弁護士費用や裁判費用などを考えると割が合わず、泣き寝入りするファクタリング会社は多いと聞く。
 
当社の場合は、いくら少額の被害でも必ず訴訟や事件化など取りうる対応をするというルールになっているが、正直、得か損かでいったら大損である。
 
それでも白黒つけるのは悪を許したくないという正義感。
そして、真っ当に取引をして下さっている大多数のお客様への誠意であると考えている。
 
だから、当社ではたった1万円であっても詐欺は詐欺として事件化してきた。
 
伊藤さんは話を続けた。
 
伊藤さん「しかも、御社から振り込まれた20万のうちの半分は、コンサルティング費用とのことでこの人(資金調達王)に持っていかれました。
私はたった10万円の為に詐欺として逮捕されなきゃいけないんでしょうか?」
 
私「⋯」
 
なんともいえなかった。
正直、伊藤さんが可哀想に思った。
 
詐欺が立件されるとその後の人生に大きく影響してしまう。
とても深刻な影響が出てしまう。
 
それをたったの10万円で⋯。
 
伊藤さんは泣いていた。
 
 
結局、伊藤さんの訴訟は実行されてしまい詐欺罪となった。
もちろん、詐欺をやるのは絶対よくない。
 
でも、それ以上にめちゃくちゃ困っている時に、「ブラックでも借りられる」というような甘い言葉で詐欺の手法をレクチャーするような人がSNSで幅を利かせていることにはとても許せないと思った。
 
 
今も、SNSで検索をすると、「ブラックでも借りられる」とか「資金調達の裏技」とか「返さなくてもOKの借金ができる方法」など、様々な甘い言葉で誘う投稿があまりにも普通に闊歩している。
 
これらの多くは、人に詐欺行為をさせて、リスクを負わずに、私服を肥やす卑劣な連中であるから注意しないといけない。
 
最後に痛い目を見るのは間違えなく自分だから。
どうか思い留まって欲しいと切に願います。