2025/11/15
整備士の給料はなぜ上がらない?数字で見る“評価のズレ

クールペイです。
朝、工場のシャッターを開けた瞬間に、すでにその日の忙しさが分かってしまう。
リフトは全部埋まっていて、代車のキーはほとんど残っていない。
受付カウンターには作業待ちの伝票とキーホルダーがずらりと並び、電話は開店前から鳴り続けている。
「今日も、時間との戦いになりそうだな……」
そんな予感を抱えながら、工具を片手に最初の一台へ向かう。
ブレーキ鳴き、オイル漏れ、チェックランプ点灯、異音、電装トラブル。
最近では、レーダーやカメラのエラー、電動パーキングの不具合など、ひと昔前にはなかった診断も増えてきました。
作業の難易度も、求められる知識量も明らかに上がっています。
それでも、給料の明細を開いてみると、「数年前とほとんど変わっていない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
責任もプレッシャーも増えているのに、評価は据え置きのまま。
このギャップが、整備士のモチベーションをじわじわと削っています。
「この仕事が嫌いなわけじゃない」
「でも、この給料でずっと続けられるのか不安になる」
そんな声を、私たちは全国の整備工場からたくさん聞いてきました。
では、なぜ整備士の給料はなかなか上がらないのか。
それは、個人の努力不足ではなく、
業界全体が抱える“評価のズレ”が原因になっているケースがほとんどです。
ここからは、そのズレをいくつかの角度から見ていきましょう。
まずは、業界全体の状況を数字で確認してみます。
こちらは、整備事業者の倒産・休廃業件数の推移をまとめたグラフです。

年ごとの件数を追っていくと、長年にわたって高止まりが続き、2024年は過去最多ペースで推移していることが分かります。
つまり、整備会社そのものが利益を出しにくい環境に置かれており、そのしわ寄せが人件費にも及んでいる、という構図です。
工場に余力がなければ、整備士の給料を上げたくても上げられません。
ここからは、現場の実感に近い形で、もう少し細かく見ていきます。
平均年収が伸びにくい根本原因
整備士の平均年収は、おおよそ350万円前後と言われています。
もちろん、地域や企業規模によって差はありますが、全産業平均と比べると決して高い水準とは言えません。
しかも、長く働き続けても大きく伸びにくいのが現状です。
その背景には、整備工場の利益率の低さがあります。
車検や点検の料金は、ここ十数年ほとんど大きく変わっていません。
ユーザーの「車検は安く済ませたい」という意識が強く価格競争が続いているためです。
その一方で、作業にかかる手間や時間は確実に増えています。
昔の車検では、主に機械的な部位を中心に点検していればよかったものが、今では電動パーキングや各種センサー、カメラ、レーダー、制御ユニットまで確認対象が広がりました。
ひとつひとつの作業は少しずつ時間を取りますが、料金の枠組みだけが昔のまま据え置かれている。
この「作業だけが増えて、単価は増えない」状態が、工場の利益を圧迫しているのです。
部品価格の高騰と“薄くなる利益”
さらに追い打ちをかけているのが、部品価格の高騰です。
タイヤ、バッテリー、オイル、ブレーキ、補機ベルト。
どれも数年前と比べて値段が上がり、電子制御系の部品にいたっては、一個あたりの金額がとても高額です。
本来であれば、こうした部品価格の上昇に合わせて
工賃や見積りの出し方も見直す必要があります。
しかし、「これ以上高くしたら、お客様が離れてしまうのではないか」という不安から、料金を据え置きにしてしまうケースも多いのが現実です。
結果として、値上げの負担を工場側がかぶる形になり、
利益がほとんど残らない仕事が増えていきます。
売上は動いているのに、手元に残るお金は少ない。
そうなると、どうしても人件費に回せる余力は限られてしまいます。
これが、整備士の給料が上がらない大きな要因のひとつです。

もうひとつ見逃せないのが、「人手不足」の問題です。
近年、整備士の高齢化と若手の不足が全国的に進んでいます。
養成校の入学者は減り、若い人材は都市部や別業界へ流れやすくなりました。
ようやく採用できても、数年で退職してしまうケースも珍しくありません。
なぜ若手が定着しないのか。
その理由のひとつが、「頑張っても給料があまり上がらないように感じること」です。
工具や作業着、資格取得のための勉強時間。
他の仕事と比べて、整備士は自己投資が多い職種です。
にもかかわらず、その投資に対するリターンが見えにくいと、将来像を描けなくなってしまいます。
「十年後、自分はいくらくらいもらえているのか」
「家族を養っていけるのか」
このイメージが持てないと、どうしても他の業種に目が向いてしまうのは無理のないことです。若手が減れば、その分ベテラン整備士の負担は増えます。
一人ひとりの作業量が増え、残業時間も伸び、
身体的にも精神的にも疲れが溜まっていく。
それでも給料が増えなければ、やりがいだけで踏ん張るのはどこかで限界が来てしまいます。
電子化で増える“見えない仕事”
さらに、車の電子化・高度化も整備士の負担と「評価のズレ」を生む原因になっています。
最近の車は、もはや走るコンピュータと言ってもいいほどです。
故障診断ひとつ取っても、診断機でエラーコードを読み取り、サービスマニュアルや配線図を確認し、場合によってはソフトウェアのアップデートや初期化作業まで伴います。
昔であれば、音や振動、匂いである程度原因を絞り込めた故障も、今では電子的な情報を読み解かないとたどり着けないケースが増えました。
そのため、ひとつのトラブルを解決するのにかかる時間は、確実に長くなっています。
しかし、その時間は「見えにくい作業」です。
お客様からすると、「パソコンにつないで、ちょっとピッとやっただけ」に見えてしまうこともあります。
そこで適切な料金をいただこうとすると、「そんなに高いの」と驚かれてしまうことも少なくありません。
本当は、診断にかけた時間や知識こそが一番の価値なのに、そこが正しく評価されない。
このギャップが、「頑張っているのに給料に反映されない」という感覚につながっていきます。
評価のズレを埋めるための三つの視点
では、どうすればこの“評価のズレ”を少しでも埋めていくことができるのでしょうか。
ポイントは、大きく三つあります。
ひとつ目は、「整備の価値を言葉で伝えること」です。
たとえば、車検の見積りを出すときに、単に金額だけを提示するのではなく、「どの部分にどれだけの手間と時間がかかるのか」「この作業をやっておくことで、どんなトラブルを防げるのか」といったことを丁寧に説明する。
それだけで、お客様の受け取り方は大きく変わります。
値段だけを見ると高く感じる見積りでも、中身の説明を聞いて納得すれば、「それならお願いしよう」と前向きに判断してもらえることが増えていきます。
二つ目は、「単価の付け方を見直すこと」です。
高度な診断や、特殊な作業には、通常の工賃とは別の形で料金を設定する。
たとえば、診断料をきちんと明示したり、
コンピュータ関連の初期化作業や再設定に専用の項目を用意したりする。
最初は勇気がいりますが、一度きちんと仕組みを作ってしまえば、スタッフ全員が同じ基準でお客様に説明できるようになります。
結果として、「サービスでやってしまう」作業が減り、
少しずつ利益が積み上がっていきます。
三つ目は、「時間の使い方を根本から見直すこと」です。
入庫予定や作業内容、部品の手配状況をホワイトボードやツールで可視化し、
スタッフ全員が同じ情報を共有できるようにする。
車検や点検の案内を早めに送り、作業日程に余裕を持たせる。
洗車や室内清掃、タイヤの履き替えなど、技術的な難易度がそこまで高くない作業を補助スタッフに任せ、整備士は「整備士にしかできない作業」に集中する。
こうした工夫の積み重ねによって、一人あたりの残業時間を減らしつつ、売上や利益を維持できるケースは少しずつ増えています。
もちろん、これらはどれも簡単にできることではありません。
日々の仕事に追われる中で、新しい取り組みを始めるのはエネルギーが必要です。
しかし、何も変えなければ、「忙しいのに給料は上がらない」という今の状態が続いてしまいます。
大切なのは、いきなりすべてを変えようとしないことです。
まずは、「明日からでもできそうな小さな一歩」を決めてみる。
たとえば、見積りの時に一言だけ説明を増やしてみる。
今日の入庫車両と作業内容を、朝礼で一度みんなで確認してみる。
診断にかかった時間をメモしておき、後から振り返れるようにする。
そうした小さな取り組みでも、続けていけば必ず現場の空気は変わっていきます。
「忙しいだけの毎日」から、「ちゃんと評価されるための土台を作る毎日」へ。
資金繰りまで含めて考えるという視点
そして、もうひとつ忘れてはいけない視点があります。
それは、「変化に対応するためには、どうしても先にお金が必要になる」ということです。
診断機やリフトの入れ替え、サービスピットの拡張、デジタルツールの導入、新人教育の時間を確保するための人員増強。
どれも、整備工場の未来を考えれば必須の投資ですが、目の前の支払いに追われている状況では、どうしても後回しになってしまいます。
「本当はやった方がいいこと」が分かっているのに、
資金的な余裕がなくて動けない。
この状態が続くと、気づかないうちに競合との間に差がつき、結果として利益率の差、整備士の給料の差となって現れてしまいます。
だからこそ、これからの整備工場には、「資金繰りも含めて経営を考えていく」という視点が欠かせません。
売掛金の入金をただ待つだけでなく、将来入ってくるお金をうまく活用しながら、必要なタイミングで必要な投資を行っていく。
その積み重ねが、最終的には「整備士の給料を上げられる余力」につながっていきます。
整備士の給料が上がらないのは、頑張っていないからでも、やる気が足りないからでもありません。
価値に対して、まだ価格と仕組みが追いついていないだけです。
だからこそ、今の現状を嘆くだけで終わらせるのではなく、「どうすれば整備の価値をもっと伝えられるのか」「どうすれば利益を生み出す仕組みを作れるのか」という視点を、現場と経営が一緒になって考えていくことが大切です。
その小さな一歩を後押しする存在として、私たちクールペイもお役に立てればと考えています。
クールペイの提供する二者間ファクタリングサービス「CoolPayAuto」は、自動車販売店や整備工場、バイクショップといった事業者さまが、将来の売掛金を有効に活用できるよう設計されています。
売上の入金タイミングと、仕入れや人件費の支払いタイミングは、どうしてもズレが生じがちです。
そのズレを埋めるために銀行融資だけに頼ってしまうと、返済のプレッシャーや審査の負担が重くのしかかります。
ファクタリングであれば、売掛金を早期に資金化できるため、設備投資や人材採用、業務効率化ツールの導入など、「将来の収益につながる一歩」を前倒しで打ちやすくなります。
その結果として、整備工場としての付加価値が高まり、
長い目で見れば整備士の待遇改善にもつなげやすくなるはずです。
もちろん、どの資金調達方法が最適かは、工場の規模や状況によって異なります。
大切なのは、「選択肢を知らないまま我慢を続けてしまうこと」を避けることです。
もし今、「やりたいことはあるのに、資金面がネックで動けていない」と感じているなら、一度選択肢のひとつとして、CoolPayAutoを検討してみてください。
整備士の価値が正しく評価される職場づくりに向けて、私たちは資金面からその挑戦を支えていきます。
忙しさに追われていると、給料や将来についてじっくり考える余裕はなかなか持てません。
それでも、どこかのタイミングで一度立ち止まり、
「この仕事を続けるために、何を変えていくべきか」を考える時間が必要です。
数字で見れば、今の整備業界は決して楽な状況ではありません。
それでも、現場で汗を流す整備士一人ひとりの技術と責任感は、社会にとって欠かせない価値であり続けます。
その価値が、きちんと給料という形で報われるように。
そして、「整備士を続けてきてよかった」と胸を張って言える人を、一人でも増やせるように。
クールペイは、これからもみなさまの挑戦を応援していきます。 >>



