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2025/12/06

車検法令違反から学ぶ|指定工場が適正に運営するための【取り組むべき対策4選】

車検法令違反から学ぶ|指定工場が適正に運営するための【取り組むべき対策4選】

こんにちは。
クールペイです。
 
数年前のビッグモーター不祥事も記憶に新しいところですが、札幌トヨタレクサス東苗穂店で大規模な不正事案が発覚しました。
 
・指定工場の法令違反…人ごととは思えない
・やはり短時間車検が要因じゃないの?
・業界全体のマイナスでしかない・・仕事やりづらいなぁ
 
…と不安や危機感を抱く整備事業者様も多いのではないでしょうか。
 
法令違反は絶対にあってはなりません。
一度でも法令違反が発覚してしまうと、社会的にも非常に重い処罰を受け、会社存続にも関わってきます。
 
今回の記事では、札幌トヨタで発覚した不正事案や国土交通省の最新統計、指定工場が直面している問題点をテーマに書きたいと思います!
 
 

結論として、不正事案を発生させないよう、具体的に取り組むべき対策は以下の4つです。

 
・人材確保
・スタッフ育成
・時短のための設備投資
・運転資金の確保
 
法令順守が会社と現場で働く1人ひとりを守ることになります。
優先して取り組むべきは、働く環境の改善や現場の負荷軽減、人材育成、社員教育などです。
不正案件を発生させないように、しっかりと対策していきましょう。 車検法令違反から学ぶ|指定工場が適正に運営するための【取り組むべき対策4選】
 
 

【実例】札幌トヨタレクサス東苗穂での不正案件

 
2025年11月21日、北海道運輸局は札幌市東区にある自動車ディーラー「札幌トヨタ自動車株式会社レクサス東苗穂」の行政処分を発表しました。
 
内容は、道路運送車両法違反による指定自動車整備事業者の指定取り消しという最も重い行政処分です。
同時に、不正に関与した40代の自動車検査員1名に対して解任命令を出しています。
 
指定取り消しにより、同店舗は2年数カ月の間、車検業務を行えなくなりました。
また、お客様の信頼回復のために、あらゆる手段を講じる必要があります。
 
不正の内容は、車検の完成検査で本来必要な「ブレーキ制動力検査」を実施しないまま、適合証を交付していたことです。
 
レクサス東苗穂店では、2022年4月~2025年4月の3年間で、1,639台の車検入庫がありました。
そのうち1,000台もの車両において「ブレーキ制動力検査」が不正に処理されていたのです。
 
安全走行の根幹にかかわる車検の検査が、常態的に省略されていたことが明らかになったのです。
 
 

不正案件はなぜ発生したのか?

 
最新の設備とブランド力を持つ大手ディーラーにおいて、これほどの不正が長期間にわたり、なぜ見過ごされてしまったのでしょうか?
 
この問題の根源にはすべての整備工場が直面し得る「構造的な問題」があります。
札幌トヨタが認識している原因は、以下の通りです。
 
・現場の業務負荷増大に伴う工程管理の形骸化
・組織全体としての管理体制および業務監査の不備
 
現場からは「忙しくて検査を省略した」という供述があり、会社側も「受注管理が行き届かず、業務過多になった」と認めています。
 
しかし、調査にあたった北海道運輸局は、検査員1名当たりの台数について「過多ではないだろう」という見解を示しています。
この「現場の感覚」と「行政の判断」のズレこそが問題の核心ではないでしょうか。
 
現場では個々の能力差こそあれ、できることを精一杯こなしているが、仕事はいつまでも終わらない。
会社側も適材適所の人員配置やスタッフ育成の時間が確保できないなど、問題を抱えている。
 
それでもお客様からは仕事の依頼があり、利益をだしていかなければならない。
このような「構造的な問題」が結果として不正につながってしまったと考えられます。
 
実際の現場では、客観的な人員数や設備面だけで、キャパシティを測れないことが往々にしてあります。日々の業務に忙殺されてしまい「納期を守るためには不正も仕方ない」「業務量が多すぎてこなせない」などの、その場しのぎの仕事が不正の温床です。さまざまな問題が複合的に絡み合い、安全を担保するはずの車検制度を形骸化させていたといえます。
 
出典:北海道ニュース/UHB【車検でブレーキ検査せず】2022年からの3年間で1000台も…
 
 

札幌トヨタが発表した再発防止策

 
この重大な経営課題に対し、札幌トヨタ自動車は再発防止に向けて具体的な取組みを発表しました。
注目すべきは「人の努力や意識」に頼るだけでなく「仕組み」と「設備」への投資を最優先に据えている点です。以下に札幌トヨタ自動車の声明文を抜粋します。
 
~札幌トヨタ自動車の声明文~
【再発防止策】
このような不適切な運用が生じた背景には、現場における整備業務の負荷増大に伴う工程管理の形骸化、加えて組織全体としての管理体制および業務監査の不備が一因であったと認識しております。
本件を厳粛に受け止め、再発防止に向けて以下の取組みを実施いたします。
・全店舗における完成検査手順の再確認と法令順守意識の徹底
・車検業務の適正な運用を目的として、新システムを全店舗に導入
・作業工程管理システムを活用した適正な作業計画の策定
・店舗管理職および自動車検査員に対する法令遵守教育の再徹底
・営業本部による店舗巡回点検体制の強化
・内部通報制度の整備と風通しの良い職場風土の醸成
 
車検法令違反から学ぶ|指定工場が適正に運営するための【取り組むべき対策4選】
 
出典:レクサス東苗穂における車検完成検査に関する行政処分のご報告とお詫び.pdf
出典:国土交通省|北海道運輸局「指定自動車整備事業者に対する行政処分について」.pdf
 
この再発防止策には「コンプライアンス維持には、システムの導入という初期投資が必要不可欠である」という現実を突きつけています。
 
不正リスクを回避し、安全と効率化を両立させるためには、新システムや最新機器、そして人材を確保するための「先行投資」が、もはや企業の存続を左右する最重要課題になっているのです。
 
 

国土交通省~指定工場の処分件数の推移~

 
全国の指定工場における法令違反の状況はどうなっているでしょうか?
 
上記グラフは国土交通省が公表している令和6年度までの全国指定工場の処分件数の推移です。
状況としては、不正案件は減少している、とは言い切れません。
 
むしろこのグラフからは、不正行為の常態化と運輸局の厳罰化がみてとれます。令和1年以降の主な傾向と背景について考察します。
 
 
・令和1~2年の処分件数が比較的少ないのは、新型コロナウィルスの影響を受け、運輸局が立ち入り検査を控えざるを得なかったからです。
 
・令和3~4年で処分件数が増加しております。これは、トヨタやホンダなど大手メーカー系ディーラーで、大規模な車検不正が相次いで発覚したからです。メーカーによる自主点検と国土交通省の監査強化、この2つの結果、不正案件が明るみになりました。また、指定取り消しが過去最高件数に。
 
・令和5年の処分件数が跳ね上がっているのは、旧ビッグモーターの不祥事が主な原因です。その事件性は衝撃的でした。国土交通省や一般ユーザーだけでなく、保険会社などさまざまな分野にまで影響が及び、あらゆる「監視の目」が厳しくなりました。
 
・令和6年度の処分件数は微減でしたが、指定取り消し件数は高い水準で推移しています。これは悪質性の高い不正案件が摘発されていると考えられます。
 
 
指定取り消しの件数が増えているのは、不正が「個人のミス」ではなく「組織の怠慢・故意」と認定されることが増加しているためです。
 
また、近年の大規模な不正案件の発覚により、一般ユーザーからの監視の目も厳しくなっています。
不正摘発の情報元には「近隣住民」や「一般ユーザー」からの通報が一定数含まれるからです。
 
自動車業界全体の信頼性が揺らぐなか、「自分の車はきちんと整備されているだろうか」という疑念が一般ユーザーの間で浸透してきています。運輸局も、一度の監査で摘発しているわけではなく、こうした外部情報や過去の傾向から、「怪しいと思われる工場」を事前にチェックする体制を強化しています。
 
 

国土交通省~指定工場の主な違反内容の推移~

 
実際に、どのような不正行為が指定取り消しや事業停止という重い処分につながっているのでしょうか。国土交通省が公表している指定工場の主な違反内容の推移をみてみましょう。
 
近年の特徴としては、内容が「組織的・悪質」と認定される事案が増加していることです。主な違反内容は以下の通りです。
 
 
保安基準不適合車への適合証交付
国土交通省の行政処分基準では「5台以上の点検・検査を全くせずに保安基準適合証を交付する」行為は、典型的なペーパー車検として指定取り消し対象と明記されています。これは、お客様の安全を無視した最も悪質な行為です。
 
検査一部未実施
前述の札幌トヨタのように、完成検査の一部(ブレーキ、サイドスリップ、ヘッドライト光軸など)を実施しないまま、書類上では実施したとして適合証を交付するケースです。これは「時間がない」「忙しい」という現場の事情が引き起こす不正の典型です。
 
 
点検整備一部未実施
ブレーキパッドの残量測定など、車検時の法定点検整備で必要な点検を実施しないまま、点検記録簿に虚偽の記載をする行為です。特に整備士不足の工場で発生しやすく、現場の業務負荷が直接的にコンプライアンス違反につながっています。
 
これらの事例の裏にはすべて「時間と人員の不足」という問題があります。不正行為は、個人の倫理観だけでなく、業界体制の不備、つまり「経営判断の遅れ」が原因であるといえるのです。
 
 

不正案件から学ぶ【取り組むべき対策4選】

札幌トヨタをはじめとする全国の事例から、法令違反の背景には「現場の負荷」と「経営判断の遅れ」があることがわかりました。不正案件を断ち切るために、真摯に取り組むべきは、法令順守を可能にする「持続可能な職場環境づくり」です。現場の負担を軽減し、コンプライアンスを徹底するために、経営者として取り組むべき対策4選は以下の通りです。
 
 
人材確保|現場負荷を軽減する
不正の最大の温床は「時間がない」「人手が足りない」という現場の不満です。これを解決するには、新たな人材確保と離職率の低下が効果的です。
 
・魅力的な労働条件の提示
他産業と比べて整備士の給与が低い、待遇が悪いというイメージを払拭し、競争力のある給与体系や福利厚生を提示する。また、週休2日制の導入や残業の削減なども視野にいれておきましょう。
・多角的な採用ルートの開拓
中途採用だけでなく、女性整備士の採用、外国人技能実習生の受け入れなど、視野を広げた採用戦略が必要です。
 
 
スタッフ育成|品質と効率を同時に高める
 
採用した人材、既存のスタッフの能力を最大限に引き出すためには、体系的な育成が必要です。
 
・「時間がない」を生まない教育
効率的な作業手順や最新技術に関する継続的な研修を実施し、1人ひとりの作業時間を短縮する。
 
・法令遵守意識の徹底
単にルールを教えるだけでなく、なぜその検査が必要なのか(社会的責任、安全への寄与)を理解させることで、能動的なコンプライアンス意識を醸成する。
 
 
時短のための設備投資|負荷を軽減するには
 
「時間がない」という問題は精神論では解決できません。現場の業務負荷を軽減するには、テクノロジーとシステムへの投資が不可欠です。
 
・最新の診断機・検査機器の導入
故障診断機(スキャンツール)や高性能な検査機器を導入することで、検査時間を短縮し、正確性を向上させる。
 
・作業管理システムの導入
札幌トヨタも対策として挙げたように、作業工程管理システムやデジタル記録簿を導入し、誰が、いつ、何を検査したかを明確に記録・管理できる仕組みを構築する。これにより、チェックの形骸化を防ぎます。
 
 
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・優秀な人材を確保するための高水準な給与や採用コスト
・不正防止の鍵となる新システムや最新機器の導入コスト
 
これらの「未来を守るための投資」はキャッシュフローが安定しない中小規模の整備工場にとって、大きな経営の壁となります。
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