2025/12/12
自動車業界の人材不足問題|外国人整備士の受け入れ【変化の兆し3選】

クールペイです。
自動車業界の人材不足は、ここ数年でますます深刻になっています。
・人手はいつも足りない。このままじゃ仕事を受けきれなくなる・・
・若手が入社してくれないから、スタッフの高齢化が進んで心配
・外国人整備士の受け入れも検討しているが、定着してもらえるか不安
こうした悩みを抱える整備工場の経営者は少なくありません。
整備工場の人材不足問題は切実です。自動車整備士専門学校の入学者は減少し続けており、国内だけで整備士を確保するのは難しい状況です。
このままでは、車検・整備業務の受注を制限するしかなくなり、事業の継続すら危うくなる可能性があります。
外国人の採用は「次の一手」というより「中長期的な事業戦略」として必須になってきているのです。
今回の記事では、自動車整備士の人材不足の現状を整理し、外国人整備士受け入れに関する最新動向について解説します。
今回の記事を読めば、以下のことがより理解できます。
・自動車整備士の人材不足がなぜ起きているのか
・国の人材確保政策の方向性
・外国人整備士の受け入れに起こっている「変化の兆し」
・整備工場として、どんな取り組みをすべきか
2025年は、外国人整備士の受け入れ制度が大きく変わった年でした。今からでも情報を集め、外国人整備士の受け入れ体制を準備した工場が、数年後の人材確保で優位にたてます。
整備業界の未来は、外国人材を短期的な労働力としてではなく、長期的なパートナーとして育成・定着させられるかにかかっているのかも知れません。
整備業界は【人材不足】現状について解説

自動車整備業界の「人材不足」を顕著に表す、自動車整備専門学校入学者数の推移グラフです。ここ数年は下げ止まりの傾向がみられるものの、過去18年でみると、約47%も減少しています。これでは業界の世代交代がされず、整備士の高齢化が進行してしまうのも当然です。社会インフラの一端を担う、非常に価値のある職種にも関わらず、整備士のなり手がいないのはなぜでしょうか?
少子高齢化
少子高齢化は整備業界に限らず、日本全体の構造的な問題です。整備士になり得る18歳人口そのものが、過去20年で大きく減少しています。国内の自動車整備士の平均年齢は年々上昇しており、引退するベテラン整備士の数に対し、新たに資格を取得する若手整備士の数が圧倒的に足りていません。人材の母数が減っている以上、国内需要だけで充足することは、もはや不可能です。
若者の車離れ
若者の車離れも大きな要因です。都市部を中心に公共交通機関やカーシェアが浸透し、車を持たなくても困らないライフスタイルが確立されています。その結果、運転免許証を取得していない若者も増えているのです。車への興味・関心が薄れている世代に「車の専門技術職である整備士」を職業で選んでもらうことは難しいです。
自動車整備士という職業を選ぶ必然性がない
自動車整備士には、いまだに「きつい・汚い・給料安い」というイメージが残っており、就職先として選ばない若者が一定数います。また、自動車整備士は高い専門性と責任を伴う仕事であるにもかかわらず、社会的な評価や待遇が十分とはいえない、という声もあります。その結果「車が好き」という情熱がないと、職業の選択肢にすら入ってくることがないのです。
整備士の人材不足により起こっていること

上記グラフが示す通り、整備士は年々高齢化が進んでおり、世代交代が進んでいないことがみてとれます。人材が不足し続ければ、現場の負担増➡作業効率の低下➡受注制限➡売上減少という悪循環になりかねません。整備士の人材不足は事業存続を脅かす大きな問題なのです。
自動車整備士の高齢化
人材の母数減少と若者の整備士離れの結果、整備士の平均年齢は上がり続け、現在では45歳を超えるともいわれています。長年の経験と技術の蓄積は企業の貴重な財産です。しかし、体力的な負担の増加、EV(電気自動車)やADAS(先進安全技術)といった最新技術の学習コストは工場全体の生産性を下げてしまいます。
整備士は社会インフラを支える専門職ですが、若い世代から「魅力的な職業」として認識されにくい状態が続いているのです。
有効求人倍率が5.09倍という異常数値
自動車整備士の有効求人倍率は5.09倍(令和4年度、国土交通省資料より)と、一般職の約5倍以上という異常な数値です。整備士が欲しい企業5社に対して、応募してくれる整備士は1人だけ、という状態です。これは構造的な供給不足であり、国内市場だけでは採用が成り立っていないことを示しています。
これからの整備工場は、外国人材の受け入れを検討するなど、将来を見据えた対策が必須です。
国土交通省資料より|人材確保の施策【国内人材の確保】【外国人材の活用】
国も施策として人材確保に動き出しております。一企業でできることは限られてしまうので、国の方針を理解し、自社の取り組みにどう落とし込むかを考えることが重要です。令和6年3月1日に公表された「国土交通省資料~自動車整備分野における人材確保に係る取組~」では、2つの取り組みが掲げられています。「国内人材の確保」と「外国人材の活用」です。
今までの取り組みだけでは、整備士を十分に確保できないという前提に立ち「募集・定着・育成」+「外国から受け入れる」の両軸で業界を支える施策です。
【国内人材の確保】3つのポイント
同資料によると、国内人材の確保のために3つのポイントを掲げております。そのポイントとは「人材の募集」「人材の定着」「人材の育成」の3つです。
1.人材の募集
若年層に整備士の魅力を伝えるための取り組み
・整備士PRポスターの作成
・運輸支局長などによる高等学校訪問
・高校生を対象とした整備作業の体験プログラム
2.人材の定着
働きやすい環境づくり
・経営者向けセミナーで多様な働き方を理解してもらう
・職場環境改善の取り組みを促進
3.人材の育成
最新技術に対応できる整備士を育成
・EVやADASなど先進技術の合同研修を支援
・養成校へのVR教材や最新車両の導入
【外国人材の活用】
同資料によると、自動車整備分野の技能実習・特定技能を活用して外国人整備士を受け入れ、長期間日本で就労できる環境を整えていくことが明確に示されています。この取り組みは、足りない人手を補うための応急処置でなく、外国人材を「育成し、定着させる」前提に制度が作り替えられつつあるという、大きな方向転換なのです。主な取り組みは以下の通りです。
・受け入れルールの明確化
・海外政府との連携強化
・育成就労制度の本格運用
外国人整備士の受け入れに関する動きは、今後大きく変化していきます。2025年に外国人整備士の受け入れに起きた「変化の兆し」を見逃さないようにしましょう。
外国人整備士の受け入れ【変化の兆し3選】

日本の自動車整備分野における特定技能1号の受入数をみると、令和5年6月末時点で最も多いのはベトナム1,048人、次いでフィリピン719人、インドネシア194人と続きます。アジア諸国を中心に受け入れが進んでいる一方で、近年は「日本に来てくれる外国人整備士の確保」が難しくなりつつあります。理由は、日本を取り巻く環境が大きく変化しているためです。
外国人整備士の受け入れにおいて、今まさに起きている「変化の兆し3選」について解説します。
ベトナム人材が激減|働く国は日本以外にもあるという事実
出典:日本経済新聞 2025年10月29日
10月29日、日本経済新聞に衝撃的な記事が掲載されました。「日本は単なる研修の場に 海外に狙われる外国人整備士」という見出しです。以下に内容を抜粋します。
近年、整備工場の採用現場では「ベトナム人整備士の応募がほぼゼロ」という声が急増しています。実際に愛知県の大手整備事業者でも、かつて外国人整備士の半数以上を占めていたベトナム人材が、現在では2割まで低下しているという報告があります。
この背景には「ベトナム人の給料が円安で目減りして、本国へ仕送りできなくなっている。ベトナム人がより稼げる韓国や台湾に流れている」可能性があるとのこと。
フィリピン人整備士に対してはオーストラリアの人材会社が日本国内で採用活動を行っているとの声も聞かれます。日本式の丁寧な整備教育を受け、英語が話せる人材は即戦力になるので、海外で重宝されるのです。「オーストラリアの給料は2倍以上なだけに、日本が単なる外国人整備士の研修の場になりかねない」と事業者の間でも危機感が強まっています。
オートバックスグループがインドネシアと提携|人材確保の新たな潮流
出典:日本経済新聞 2025年7月10日
2025年7月10日、日本経済新聞の記事からの引用です。
自動車用品大手のオートバックスセブンが特定技能人材を活用した、自動車整備士の育成に力を入れています。同社はインドネシア労働省やフィリピンの大学と提携し、日本で整備士として働きたい若者を募集。2025年に20人弱を受け入れ、将来的には年間数百人規模まで拡大を目指しています。
オートバックスセブンは、これまでに延べ700人以上の外国人材を受け入れてきたノウハウがあります。このノウハウを活かし、特定技能1号の在留期間内に2級自動車整備士資格の取得を徹底サポート。資格を取れないまま在留期間を終えてしまう課題に対し、勉強に集中できる体制を整えています。
インドネシアやフィリピンではモータリゼーションが加速し、整備技術を学びたい若者が多数います。こうした人材をいち早く獲得し育成する動きは、外国人整備士の確保が必須になる時代の到来を示しています
技能実習を廃止し育成就労へ移行|「長期的に育てて定着してもらう」時代へ
2024年、政府は外国人労働者の受け入れ制度であった「技能実習制度」を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する方針を示しました。技能実習制度は育成を目的としながら、実態は労働力として扱われる場面が多く、制度の見直しが求められていたためです。
2025年3月に育成就労制度は閣議決定されました。この制度は、外国人材の働き方をより柔軟にし、外国人材が長く働き続けられるように支援する仕組みです。たとえば、同一業務区分であれば本人の意向で転籍(職場変更)が可能となり、送り出し国との2国間取り決めや費用上限の設定など、公正性を担保する仕組みも導入される予定です。
また、一定の実務経験を経て「特定技能1号」へ移行し、さらに「特定技能2号」に進めば在留期間の上限がなくなります。このプロセスを円滑にするため、政府は資格取得に必要な実務期間の短縮も検討しています。
こうした流れは、整備工場側にも「短期間で即戦力を確保する」から「長期的に育てて定着してもらう」という意識転換を求めています。すでに人材育成に重きを置く取り組みも広がりつつあります。外国人整備士を長く働くパートナーとして迎える体制づくりが始まっているのです。
人材不足の問題は、中長期的に取り組み続ける必要があります。私たちクールペイは、ファクタリングサービスを通じて経営者様のサポートを続けていきます。資金面でのご相談があれば、ぜひお声がけください。
整備工場・車&バイク販売店を応援するファクタリングサービス
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